
「資産運用会社(Asset Manager)と機関投資家(Asset Owner)がオンラインで繋がり、投資判断のための情報交換ができるプラットフォームが欲しい」。Alpharevoの原型となる構想を考え始めたのは、今から約6年前、私がまだゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントで機関投資家営業として働いていた2015年頃でした。GSAMに入社する以前はいわゆるセルサイドと呼ばれる証券会社で働いており、そこでは機関投資家とセルサイドの営業、トレーダーが日々Bloombergメッセージでやり取りしながら証券の取引を行っており、売り手と買い手の間での証券価格等の情報伝達は非常に効率化されていました。機関投資家は世界中から自分のニーズに最も合致した証券を、最も有利な価格で取引できます。
証券業界から資産運用業界に移籍し、取り扱う商品が「証券」からより複雑な「投資戦略」というものに変わり、そこには売り手と買い手のとの間で大きな情報の非対称性があると感じました。アセットマネジメントの営業では、Bloombergチャットで商品への興味と価格をやり取りしただけで取引が成立するということはなく、基本的には対面での詳細な投資戦略の説明と、運用チームとのミーティングを重ね、念入りなデューデリジェンスを行った上で投資が決定されます。
そのような対面での詳細な説明と、投資後の継続的なフォローが必要な性質上、一人の営業担当者がカバーできる顧客数や提供できる情報量には限界があります。情報提供を受ける機関投資家の側も、世界に運用会社は何万社も存在しますが、ニーズに合う情報提供はごく一部で、その中から投資先を決定しなくてはならないという実態があります。
昨年より始まったコロナ過の影響で私たちの働き方は大きくかわり、これまで対面で行われていたミーテングはすべてオンラインとなり、大規模カンファレンスもウェビナーに変わりました。ミーティングがオンラインとなったことで、確かに得られる情報の質は少し低下したかもしれませんが、移動が不要になったことで投資家はミーティングからミーティング、カンファレンスから別のカンファレンスに気軽に移動し、これまでより何倍も多くのマネージャーの情報取得が可能となりました。マネージャーの側としても、ウェビナーを開催すればこれまでの対面のカンファレンスよりも多くの投資家が世界中から参加してくることが可能となりました。
一方で、オンラインは対面でのコミュニケーションを完全に置き換えるものでは無いと考えています。デューデリジェンスではマネージャーのオフィスを現地訪問し、トレーディングフロアを視察することでオンラインでは伝わってこないカルチャーや雰囲気といった情報も得られます。オンラインサービスは対面と組み合わせることで、情報収集の間口を広げることに活用できます。
マネージャーと機関投資家をマッチングするオンラインサービスは昨年頃から立ち上がりはじめ、既に海外では普及し始めています。ゴールドマン・サックスが立ち上げたMarquee Connectや、同じくNew Yorkで立ち上がったiConnectionsという独立系サービスがパンデミックの影響で拡大してきております。Alpharevoのサービスは、中立的な立場から、日本の機関投資家向けに国内外の運用会社の情報を日本語でわかりやすく提供することを目的としており、その実現のため当社は金融商品取引業者として登録を行いました。これから機関投資家の皆様のマネージャー採用の為の情報収集のインフラとして、ご活用いただけるサービスにしていきたいと考えております。
日本経済の成長率は他の主要国と比較して低下してきておりますが、依然として保有する金融資産の規模は世界有数であり、投資大国と言える地位にあります。当社は、日本の機関投資家が高い投資成果を上げることは、資産運用業界のみならず、日本経済全体にとって非常に重要な事であると考え、本邦の投資運用業の健全な発展に貢献したいと考えています。今後とも、何卒宜しくお願い致します。
2021年6月
代表取締役 椿 雄一郎